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あとがき

個人的な体験ですが、堂免信義さんの『脱・資本論』の原稿に目を通した時の衝撃は忘れられません。
特に、円という日本国の通貨をキューなる電子通貨に切り替えることで、ゼロ利子無期限貸し出しを可能にし、国債の代わりにするという提案には震撼しました。

原稿に目を通したと申し上げましたが、実は当時私が友人と経営していたインディーズLLCでアマゾンでの電子出版のお手伝いをさせていただいたのです。
そして、私個人は二十数年前に電子マネーの仕事に従事していたのです。
何たる展開!と思いました。

当時、日銀では通貨を電子マネーにする検討を進めていて、私の会社が端末やシステム開発に関するフィージビリティスタディを行っており、私は技術担当の部長としてその仕事に関わっていました。
今手元にあるこの写真は、当時ロシアで講演をした時のもので、まだ若いです(笑)。





左の髭の紳士はロシア中央銀行の総裁です。 その隣の金髪のご婦人はロシア金融アカデミーの総裁で、なんと中央銀行の総裁より偉い人なんだそうです。 なにせ、ロシアの金融界で活躍する官僚は全員金融アカデミー出身者なので、彼女には頭が上がらないとか。
そんな偉い人と並んで講演した私ですが、何をしゃべったかというと、将来おカネはコンピュータの中の数字に置き換わり、決済は世界のどこにいても瞬時に終わるようになるということと、おカネがおカネであるためには絶対に複製できないよう頑丈なセキュリティで守られていなければならず、そのためには特別のチップに入れなくてはならない、と言うものでした。

こういう話はロシア人には大変関心があるのだそうで、かの国はソ連時代からウラル山地やシベリアなどに秘密軍事都市をこしらえていたけれど、そこで必要とするルーブル紙幣をトラックで運ぶのが大変なのだそうです。それが電子マネーになれば電話線で送れるわけですから、彼らが興味を持つのは当然でした。

当時はインターネットも遅く、今のようなブロックチェーン技術もなかったので、高セキュリティを追求すればICカードになるのは必然でした。
すべてをサーバーに置き、ネットでそこにアクセスするタイプの電子マネーを提案している研究者もいたことはいたのですが、ボクらは目もくれず、ICカードの端末や電話機の開発などを進めていました。
ところが、我が日本ではスイカなどの非接触型のICカードが急速に普及し始め、電子マネーもそれに対応できなくてはダメだということになってきたのです。
ピッと一瞬で支払えることに価値があったのです。
しかし、高セキュリティを追求したボクらの電子マネーは複雑な演算処理を必要とする公開鍵暗号方式を採用しており、この演算を高速に実行する専用回路(コプロセッサ)をCPUとは別にチップ内に内蔵していました。これがどういう意味かと言うと、普通のICカードより電力をたくさん食うということです。
スイカなどのICカードを動かす電力は、駅のゲートから電磁誘導で非接触供給される微弱なものなので、このようなパワフルな処理が行えず、その他いろいろあってこの電子マネープロジェクトは解散の憂き目を見ることとなってしまいました。

長々と個人的な思い出を記したのは、これを書いているボクは一体何者なのかという読者の方々の素朴な疑問にいくらかでも応えるためです。つまり、全くのど素人ではなく、内容にはある程度の信頼性があることを知っていただきたかったわけです。
とはいえ、名人の手にかかると電子マネーはこんなにも世界を変える力を発揮出来るんだとは、心底恐れ入りました。そんな日が一日も早く来ることを心から祈っています。
何しろもう時間は残されていないと思うので。

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