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ではどうする?

さあ、それでは錯覚については大体わかったようだから、じゃあどうすればいいのかについて考えてみよう。
まず、堂免信義さんの指摘する「経済学の錯覚」を整理してみてくれないか。

--社会全体では使ってもおカネは減らず、持ち主が変わるだけだから、誰かが儲かれば必ず誰かがその犠牲になって損をする(持ち金を減らす)という事実に気がついていないこと。


まず、それがすべての基本だね。そしてこのことから、社会全体ではおカネの総量は変わらないので、全員が儲けることはできない、となるね。言い換えれば社会全体の貯蓄はこの状態ではゼロでしかありえないということだ。
他には?

--外から投資したおカネが社会全体の貯蓄になるのを、貯蓄の中から投資が行われると勘違いしていること。これは貯蓄という言葉の使い方があいまいだから、という気もするな。


その指摘は大事だね。貯蓄はあくまでその期に増えたおカネのことで、ボクらは蓄えの全額は預金と呼ぶことにしたんだったね。

--同じことだけど、国債が発行されると民間の貯蓄が増えるのを、民間が蓄えた貯蓄の中から国債が買われると勘違いしていること。だけど、時間的な順序を正確にとらえていけば、本当は間違えるはずはないと思うな。


それも大事なポイントだね。言葉遣いを正確にし、時間軸を意識して数字を追う習慣が大事だね。
さて、ではこれらの錯覚に立ち向かい、経済を正しい軌道に乗せるにはどうしたらいいと思う?
何でもいいから思いついたことを話してみて。
ただし、問題意識としては、貧困をなくすことと格差をなくすこと、そして社会が不安定にならないようにすることだから忘れないように。

--格差をなくすには、おカネ持ちからおカネを取り戻す。


ちょっと待って。持っている人から取り上げる以上、それが社会的な正当性のある行いだと社会の全員が納得していないと難しいよね。泥棒が盗んだおカネを返させるのは誰でも当然だと思うけど、ただおカネ持ちだというだけでそんなことをしてもいいのかな。

--誰かが儲けるのは他の人の犠牲を伴うんだから、その事実を皆んなが知ればいいんじゃないかな。


その考えが社会の常識になることが大前提だね。だから、まず教育から始めなくてはならないかもね。

--国債の場合だと、国からのプレゼントになっていることを知れば、それを返納させることは納得してもらえるんじゃないかな。


じゃあ、どうやってそのおカネが国債発行によって国からその人にプレゼントされたものであることを証明するの? おカネに色は付いていないからね。

--難しいけど、たとえば国債が1兆円発行されたとすると、期末に社会全体で1兆円貯蓄されているのはわかっているのだから、合計が1兆円になるように各人のその期の貯蓄から一定の比率で徴税したらどうでしょう。


それなら初めから全部税金でまかなえばいいんじゃないの?
それが額が大き過ぎてできないから国債になっているんだと思うよ。
それに、その期の貯蓄がすべて銀行に預金されているわけじゃなく、様々な固定資産に化けているかもしれないし、皆さん節税には熱心だから実態はなかなか明らかにできないのじゃないかな。

--うーん、回収は難しそうだなあ。


ただ、何らかの形で資産に課税して回収することは必要だろうね。流入してきたおカネは株や債券などの金融資産か土地などの固定資産になっているだろうからね。

--堂免信義さんは何か言ってますか?


一般論としておカネのありかを見つけるのは難しいことを認めた上で、相続する時にはそれが浮かび上がってくるから、相続税としてそれまでに国民に贈与したおカネを回収する方法を提案しているよ。
ただし、土地の相続は土地が細切れになるのを防ぐ意味で無税とし、金融資産に課税するアイデアなんだ。マッチ箱ハウスは相続税が払えなくて土地を細切れにし売却した結果であることを思うと、一理ある提案だとは思うけどね。

--それだと、大地主はいつまで経っても大地主のままだね。


そうだね。この辺りはさらにキメの細かい方策が求められそうだな。
では回収についてはこのくらいにして、他に何か対策することはないかな。

--今、日本はどんどん貧困化していて、その原因は投資が海外に向かっていると言う空洞化現象にあるのだから、グローバル化に反対し、企業活動を国内に復帰させるような法律を作る。


方向としてはいいね。
ただ、いきなり海外の工場は閉鎖して日本に戻れと言っても、採算がとれるかどうかわからないから、産業界は大反対するだろうな。

--彼らは経営陣と株主さえよければ後は知らんという考えでしょ。でも、経営陣の高額な報酬や株主への配当金などはそこで働く人たちの犠牲の上に成り立っているのだから、ここは何とかして締め上げないとダメだと思うな。


よく聞く解説は、家電や半導体などの日本の産業が中国や韓国に負け、競争力を失い、利益がダウンしたので、人件費を削り設備投資をカットし、かくしてますます競争力を失っていくという悪循環に陥っているというものだけど、ボクはちょっと違う意見なんだ。
日本の産業が負けだしたのを見て、政府は様々な支援策を提供したわけで、たとえば労働市場を流動化すると称して非正規雇用を推進し人件費を抑えたり、また様々な規制を外したり法人税を引き下げたりしたんだ。一方、企業は利益確保に走り、非正規雇用で賃金を実質的に下げ内部留保を膨らませるとともに、役員報酬を大幅に増額したりもしたんだな。これが格差を広げる一因となっているのは明らかだと思うよ。もちろん、そんな有様(人的投資の引き下げ、働き方改革の名の下での労働強化など)では新技術や新製品などおいそれとは出てこないだろうね。

--他国が賃上げしている時に、日本企業は内部留保を膨らませ、役員報酬を増やしていたんですか?


その通りさ。コストカットと言いながら下請けに値下げを迫ったりね。
だから、変えるべきものを変えずに既得権益だけは守ろうとしているのが経団連傘下の大企業だと言われても仕方ないだろうな。これも老害かな。

--それなら、企業の内部留保に課税し、役員報酬にも制約を課したらどうでしょう。


どんな制約を?

--売り上げが伸びなくても、非正規労働を増やし下請けいじめをしたりして利益を出すような経営陣には認めない、とかできないかな。


なるほど、利益ではなく売り上げで役員報酬が決まるようなシステムにするということだね。
その他、非正規雇用に対する手厚い保護も必要だろうね。
これらの方策で先ほどの悪循環にブレーキがかかり、国内中心で活動している企業や労働者の疲弊はある程度回復できるかもしれないね。

--堂免信義さんはどんな対策がいいと言ってるんですか?


それが、ものすごい提案を出しているんだ。
彼の最新の著作『脱・資本論』に書かれているんだけど、それを読んでボクはこの人は本当に天才だと思ったよ。

--天才ですか。


そう。紛れもなく。
ボクは頭の良い人には3ランクあると思っている。
最初は(答えのある)問題が解ける人(ランク3)。
その上は問題を見つける人(ランク2)。
そして最上位は新しい答えを作る人だ(ランク1)。
堂免信義さんは投資に関して経済学に誤解があること、つまり問題を発見したから、もちろんランク2ではあるんだけれど、この行き詰った資本主義を価値あるものとして再創造する方法を明らかにしたと言う意味で文句なくランク1だと思うんだ。
でも、この話は長くなるので次回に回そうね。

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あとがき

個人的な体験ですが、堂免信義さんの『脱・資本論』の原稿に目を通した時の衝撃は忘れられません。 特に、円という日本国の通貨をキューなる電子通貨に切り替えることで、ゼロ利子無期限貸し出しを可能にし、国債の代わりにするという提案には震撼しました。 原稿に目を通したと申し上げましたが、実は当時私が友人と経営していたインディーズLLCでアマゾンでの電子出版のお手伝いをさせていただいたのです。 そして、私個人は二十数年前に電子マネーの仕事に従事していたのです。 何たる展開!と思いました。 当時、日銀では通貨を電子マネーにする検討を進めていて、私の会社が端末やシステム開発に関するフィージビリティスタディを行っており、私は技術担当の部長としてその仕事に関わっていました。 今手元にあるこの写真は、当時ロシアで講演をした時のもので、まだ若いです(笑)。 左の髭の紳士はロシア中央銀行の総裁です。 その隣の金髪のご婦人はロシア金融アカデミーの総裁で、なんと中央銀行の総裁より偉い人なんだそうです。 なにせ、ロシアの金融界で活躍する官僚は全員金融アカデミー出身者なので、彼女には頭が上がらないとか。 そんな偉い人と並んで講演した私ですが、何をしゃべったかというと、将来おカネはコンピュータの中の数字に置き換わり、決済は世界のどこにいても瞬時に終わるようになるということと、おカネがおカネであるためには絶対に複製できないよう頑丈なセキュリティで守られていなければならず、そのためには特別のチップに入れなくてはならない、と言うものでした。 こういう話はロシア人には大変関心があるのだそうで、かの国はソ連時代からウラル山地やシベリアなどに秘密軍事都市をこしらえていたけれど、そこで必要とするルーブル紙幣をトラックで運ぶのが大変なのだそうです。それが電子マネーになれば電話線で送れるわけですから、彼らが興味を持つのは当然でした。 当時はインターネットも遅く、今のようなブロックチェーン技術もなかったので、高セキュリティを追求すればICカードになるのは必然でした。 すべてをサーバーに置き、ネットでそこにアクセスするタイプの電子マネーを提案している研究者もいたことはいたのですが、ボクらは目もくれず、ICカードの端末や電話機の開発などを進めていました。 ところが、我が日本ではスイカなどの非接触型のICカードが急速に普及し始...